Library and Information Science

Library and Information Science ISSN: 2435-8495
三田図書館・情報学会 Mita Society for Library and Information Science
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Library Science 3: 135-141 (1965)
doi:10.46895/ls.3.135

原著論文Original Article

カタローガーの任務の探究An enquiry into the role of the cataloger

発行日:1965年7月1日Published: July 1, 1965
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図書館史の全時期を通じて,書物を収集し,使えるように組織することは一つのプロセスと考えられてきた。ところが,今世紀の初め頃から,図書館の諸活動を機能によって分けようとする傾向があらわれ,カタローギングとかレファレンスというように区別されはじめ,分離の傾向は次第にその度を強め,互いに重なりあい,依存しあっている機能を無理にわけへだてるに至った。相関連している領域を切り離してしまったことは,図書館の運営上よい結果をもたらさず,逆に深刻な障害となった。同一の目標を目指し,密接につながっているべき機能をばらばらに離し,書誌的資料を使う上に不利益となる考え方を植え付け,更にカタローガーのイメージを不幸なものにしてしまった。

1900年以来図書館の規模は非常に大きくなったので,仕事をある程度分担するようになったことは理解できるが,その分け方は主題分野によるというような合理的なものでなく,奇妙な歎かわしい方法で分離されたのである。

図書館の規模が大きくなると同時に,個々の利用者を助けるということに関心が高まったことが,このような傾向を起させた一つの原因であるとも考えられるが,利用者に援助を与えることに関心が高まったということは,レファレンス・ライブラリアンを分離させるべき意味を持っていたのではなく,むしろカタローギングの分野の啓発にこそ意味を持っていたと考えられる。

Louis Kaplanはレファレンスの歴史を書いた際,Pooleの雑誌記事索引,ALAの目録,Deweyの分類表等はレファレンス史上顕著な業績であり,Justin Winsorは米国最初の解題つき図書目録を作ってレファレンス・サービスに貢献したと述べている。これらの業績は,もしカタローギングとレファレンスの分離を認めるとすれば,目録作業の過程における産物である。それをレファレンス運動の産物としてとりあげたことは,両者を切り離すことの不当さを示す一つの証拠である。しかるに米国の図書館思想には,レファレンスをカタローギングから切り離すことには最大の注意を払いながら,目録活動はレファレンスであると規定する矛盾がある。

更にもう一つ奇妙な現象は,カード目録だけが目録であると見なして,それ以外の形態の目録は“図書”として扱い,印刷目録と索引はレファレンス・ブックと呼んでレファレンス・ルームにおき,カード目録を他の書誌的資料と切り離したことである。このようにしてカタローガーも亦孤立させられて舞台裏で働く人間となり,自分達の作り出した作品から遠ざけられて利用者の反応を知ることができなくなった。この不幸な状態は悪化して,1956年にはPierce Butlerをして,カタローガーは図書館界における最下級民でアンタッチャブルである云々,と言わしめるまでに至った。

この傾向は早くから一部の識者には憂慮され,Bishop,Shera,Egan,Ulveling,Lundy,Carnovsky等の発言は,今世紀に入ってから,図書館の最も大切な機能についての見識,洞察力が失われたためにどのようなことが起ったかを指摘している。さらに彼等は,当時の館界が社会一般の動きに影響され,成人教育とか図書館を民衆の大学にしようという情熱にかられ,目録分類は単に機械的に規則に従うことであるとし,図書館の真の機能である書誌的センターとしての役割を回避し,その結果図書館がその学術的機能を喪失するに至ったことを憂えている。

かってライブラリアンシップの主要な運動や動機づけが図書館の外部から起った事実があるが,今世紀の半ばにドキュメンテーションと呼ばれる運動と共にまた同様のことが起った。Bradfordはドキュメンテーションを,“あらゆる知的活動の記録を収集し,分類し,利用に供すること”と定義したが,これは図書館の主要任務と同じである。ドキュメンタリストは,図書館員がその任務の大事な部分を抱棄したその部分,即ち書誌組織の仕事を拾いあげて発展させた。図書館員は目録とレファレンスを切り離す運動によって始められた討論会とか読書推進運動のような益々常軌を逸する方向へ努力を集中した。しかしドキュメンテーション運動の発展と,資料の量の爆発的増大とに刺戟されて,図書館員はその第一の任務がインフォーメーションを得られるようにすることであることを再認識しはじめた。書誌的サービスに機械力の利用を考えねばならぬことを悟り,ドキュメンテーション運動に対する態度もかわって来て,自らオートメーションの可能性を研究すべく立ち上った。オートメーションで解決しようとする問題は,長年の間カタローガーの問題として知られていたものであるが,しかし新しく立ち上った図書館員の態度には,前とは違って威信がみられる。その推進力は図書館界の内から働いたか外から起ったかはともかくとして,図書館員の立場から問題を解決しようとする毅然たる態度がある。その中でカタローガーは重要な役割を果さなければならない。図書館のオートメーションは目録のオートメーションから始まらなければならない。目録をとり,分類し,図書館を組織する仕事は,これまで決してなかった程重要で有意義な仕事になるであろう。

機械はカタローガーの仕事のもっとも特徴的な部分を代行することはできない。しかし退屈な繰り返しの仕事は図書館員よりは能率よくできるので,人間の才能と機械力を組み合わせれば素晴らしい結果が得られるであろう。機械化された組織の中で,カタローガーが自己の責任を果すならば,再び重要な地位にっき,影響力を持つようになるであろう。再びカタローガーは創造的な最善の努力を尽すことを要求されるようになるであろう。彼は書誌的な問題をレファレンス・ライブラリアンが考えるよりも狭い意味で考えることは許されなくなるであろう。印刷機から流出する資料の量の尨大さと,最近の研究の緊急性とは,図書館をしてその主目的は世界的規模における書誌の組織であることを忘れることを許さないであろう。

(I. H.)

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